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最新研究情報

2019.12.13

医療系材料に対するナノ粒子処理による抗菌加工法の開発(栄養生命科学科 教授 澤井 淳)

栄養生命科学科 澤井 淳 教授 栄養生命科学科 澤井 淳 教授

シリコーン材料は高い生体適合性を有し、医療器具からドラッグデリバリーシステムまで幅広く使用されている。本研究では、簡便な含浸処理によりシリコーン膜にナノ粒子を形成させ、抗微生物活性を付与する手法を開発する。
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高齢化社会の進行は、「免疫的弱者の増加」も意味する。その様な社会においては、抗菌加工処理は必須の技術であり、医療材料においても同様です。医療分野における材料は、金属、セラミックス、高分子材料と多岐に渡りますが、高分子材料で最も臨床応用されているものは、天然ゴム、ウレタン、およびシリコーンゴムです。

特にシリコーン材料は器具・容器、水回りやパッキン等での利用に加え、その高い生体適合性を生かし、医療器具(カテーテル等)、形成外科分野(人工乳房、ティッシューエクスパンダー等)、創傷治癒分野(人工皮膚)、さらにドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用などが幅広く行われています。DDSの分野では、シリコーンの気体透過性および薬剤透過性も重要な機能を担っています。しかしシリコーン材料は、その高い生体適合性ゆえに、表面は微生物が繁殖しやすく、バイオフィルムを形成し、感染症の一因ともなります。そのため、高い抗微生物活性を有し、かつ優れた抗菌持続性を有するシリコーン材料の開発が求められています。

シリコーン材料への抗菌性の付与には、様々な方法が用いられていますが、反応が複雑であったり、大量のエネルギーが必要であったりなど手間とコストがかかります。私共は、これを2段階の浸漬処理のみで行える手法を開発しました。

シリコーンがヨウ素を吸着しやすい性質がこれまでの研究で分かっています。そこでまずヨウ素溶液にシリコーン膜を浸け、次に銀(Ag)などの抗菌性を有する金属を含む溶液に浸けることで、高い抗菌活性と耐久性を有する抗菌性シリコーン膜を作ることができました。図1はヨウ素液、次に硝酸銀溶液に浸けたシリコーン膜の表面の電子顕微鏡写真です。シリコーン表面上に10 nm程度の粒子がアイランド状に形成されていることが分かります。EDX観察により元素分析をしたところ、粒子の部分では銀(Ag:青)とヨウ素(I:赤)が確認することができ(図2)、AgIのナノ粒子がシリコーン表面上に形成し、抗菌活性を発揮していると考えられました。

図1  抗菌加工処理したシリコーン膜表面の電子顕微鏡写真(矢印がAgI微粒子) 図1 抗菌加工処理したシリコーン膜表面の電子顕微鏡写真(矢印がAgI微粒子)

図2 抗菌加工処理したシリコーン膜表面のEDX分析(矢印がAgI微粒子) 図2 抗菌加工処理したシリコーン膜表面のEDX分析(矢印がAgI微粒子)

この銀ナノ粒子で加工したシリコーン膜は、高い抗菌活性を示し、24時間で大腸菌や黄色ブドウ球菌などの細菌を1/100000以下に減少させました。また耐久性もあり、ストマッカー処理(叩き出し処理)を行っても、抗菌活性は維持されていました。シリコーン膜の特徴である、気体透過性や引張り強度なども維持されており、本研究で示したシリコーン膜に対する抗菌処理加工方法は、特別な装置も不要で室温で実施可能であり、膜以外のシリコーン材料に対する適用性も検討しています。

[文献]
Aoki, S., Yamakawa, K., Kubo, K., Takeshita, J., Takeuchi, M., Nobuoka, Y., Wada, R., Kikuchi, M. and Sawai, J.: Antibacterial properties of silicone membranes after a simple two-step immersion process in iodine and silver nitrate solutions. Biocontrol Science, 23 (3) 97-105 (2018. 9).

栄養生命科学科 食品衛生学研究室(澤井 淳研究室)紹介ページ


※応用バイオ科学部栄養生命科学科は、2020年度に健康医療科学部のもとに再編します。また管理栄養学科に名称を変更します。

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