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2022.01.07

ヒトのまぶしさ感覚の視覚メカニズムの解明(ヒューマンメディア研究センター 客員研究員 内川 惠二) 

ヒューマンメディア研究センター 内川 惠二 客員研究員

私たちのまぶしい!という感覚はどのようにして起こるのでしょうか。もちろん眼が強い光を見るからですが、その感覚が生起するメカニズムはまだよく分かっていません。本研究ではまぶしさ感覚の視覚メカニズムの一端を明らかにしました。
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私たちは視覚によって、周囲の環境から光を利用して有用な情報を得ています。視覚系は光を取り入れるために、網膜内に視細胞(錐体と桿体)を備えています。過去100年以上、光を感じる細胞はこの2種類の細胞のみと考えられてきました。ところが、20年ほど前に、光を感じる第3の細胞として内因性光感受性網膜神経節細胞(略してipRGC)という細胞が網膜内に発見されました。図1に示すように、物の色、明るさ,形の情報は錐体と桿体から脳のイメージ形成中枢へ伝えられます。ipRGCの応答は、初め、生体時計や瞳孔反射などを担う非イメージ形成中枢に伝えられていることが分かりました。しかし、最近、ipRGCもイメージ形成中枢に繋がっていることが示され、ipRGCの視覚における役割がさらに詳しく調べられるようになりました。


私たちは環境内の強い光を直接見ると眼が損傷してしまいます。眼に強い光が入るときには何らかの生体内の警告が必要です。本研究では、まぶしさ感覚がその警告であると考え、ipRGCがこの感覚に寄与しているのではないかと予想しました。ipRGCは網膜内に薄く広く分布していますので、物体の知覚には関与せず、環境全体の光変化を捉える役割があるのではないかと考えたからです。本研究ではこの予想を検証するために、心理物理学実験を行いました。その結果、この予測が正しいことが確認されました。この実験では、波長可変の高輝度LED光源を用いて、6個の円形テスト光を用意します。その中の2個ずつが組み合わされて、順次呈示され、観察者は2個のうちどちらがまぶしいかを答えます。6個のテスト光はその分光組成が調整され、視細胞応答は等しく、ipRGC応答だけが異なるように作られています。テスト光1から6になるにしたがってipRGC応答は増加します。6個のテスト光の視細胞応答は等しいので、どのテスト光でも色度と輝度は等しくなります。

観察者の応答からまぶしさ感覚を尺度化すると、図2で示す結果になりました。これは5人の結果の平均値です。テスト光が1から6へと変化するとまぶしさ感覚は増大していくことが示されています。この結果よりipRGCは私たちのまぶしさ感覚に寄与していることが明らかに示されました。


この発見は、視覚の基礎知識だけではなく、まぶしさ防止のフィルターや防眩メガネレンズの開発に大きく貢献すると期待できます。本研究室では、まぶしさ感覚以外にも色覚や明るさ感覚、質感知覚、色恒常性などの視覚の基礎研究を行い、視覚のメカニズムの解明に向けて研究が進められています。

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