2017.12.15
「人が生きる」とはいったい何なのでしょうか。「老いる」とはどういうことなのでしょう。老年看護学の視点からスピリチュアリティについて、研究を進めています。学生と老人施設に実習に行った時、80歳位の女性が、「私は何のために生きているのでしょう。夜、目が覚めると寂しくてひとりで歌を唱うんです・・」と話してくれて、研究をはじめるきっかけとなりました。
1.健康とスピリチュアリティと看護
1948年にWHOの「健康の定義」が戦後の経済復興による物質文明の追求の中で制定されました。1998年にスピリチュアルの追加提案がされ合意には至りませんでしたが、人々の健康とQOLの維持向上をめざし実践する看護師にとっては大きな意義がありました。からだ・こころ・社会的な健康、その3つの健康のバランスを保ち、生きることの源ともいえるたましい(スピリチュアル)の健康も考えなさいといわれた気がします。たましいの健康とは何でしょうか。私はたましいの健康は安寧(あんねい)な生活をすることであり、それが看護師の仕事であると考えています。スピリチュアリティとはその人にとっての究極的な意味や信念、価値を持って生きる生き方であると考えられます。
2.高齢者看護の方向性とスピリチュアリティ
地域で普通に生活している高齢者が安寧でいきいきとした生活ができるように、サクセスフル・エイジングといえる高齢者が増えるように、スピリチュアリティの具体的なケアの推進を目指して研究しています。
3.いまを生きる高齢者のスピリチュアリティ概念の生成とスケールの作成
まず、高齢者にインタビューをして「想い出」「自然や四季の移ろい」など自由に語ってもらい、生きることの意味から探求しました。最終的に23の概念が出てきました。―図を参照― 中心となる概念は《生きて生かされている自分の存在》であり、そのまわりを①乗り越えてきた道のり、②人との絆、③目に見えない力、④自分の心に向かう、⑤生きている限りの5つのカテゴリーが取り囲んでいます。調査を繰り返し、高齢者が考えているスピリチュアリティの有りようを把握するスケールができあがりました。16項目でアセスメントの道具として活用できます。スピリチュアリティはこころとからだの調和を保つための核となるもので、人間誰もが持ち、生きる意味や目的を探求する力となります。
スピリチュアリティは歳をとるとともに豊かになり、老年期の発達課題である人生の統合と深く関わり、看護師は側面から支えることが求められます。
4.スピリチュアリティの視点を入れた健康づくり
作成したスケールを用いた実証研究は、東京都、神奈川県、兵庫県、埼玉県で行い、現在は本学の近隣の地域の調査研究を行っています。高齢者の健康づくりはアンケート調査の結果を分析し、より質の高い生活が確保できるように、スピリチュアリティを視点に入れた健康生活の具体的支援の方向性と実践の手がかりを模索して試行の段階です。