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温度に応答するヒドロジェル粒子の作製と機能(応用バイオ科学科 清水 秀信教授) 

生物は、光や温度などの外部環境の変化を捉えて巧みにそれに応答する機能をもっています。この機能を人工の高分子材料に付与し、その機能を医療・食品分野に応用する研究を進めています。
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応用バイオ科学科 清水 秀信教授

寒天などの多糖類は、温度が高いときには水に溶解していますが、温度を下げると水溶液の流動性は失われ、ゼリー状になることはよく知られています。またこの変化は可逆的なため、温度を上げると、水溶液の状態に戻ります。このように温度に応答する性質は、分子量が大きい高分子物質において見られる特有の現象です。

例えば、天然高分子の1つであるヒドロキシプロピルセルロースの水溶液は、42℃より低い温度では高分子鎖が溶解しているため透明な溶液ですが、42℃以上になると高分子鎖が水に溶けなくなるため、水溶液は白濁します(図1)。このように、ある温度を境に高分子鎖の性質が大きく変わる材料は温度応答性高分子材料と呼ばれており、性質が急激に変わる温度のことを相転移温度といいます。温度という刺激に応答する材料は、特に生体材料の分野でその開発が進められています。ここでは、温度応答性高分子を橋かけした温度応答性ヒドロジェル粒子(多くの水を含有するジェル粒子)とその応用例について紹介します。

温度応答性高分子の鎖を橋かけして三次元網目構造にすると、感温性ヒドロジェルが得られます。橋かけすることにより、低温にしても水に溶解しなくなりますが、その代わり相転移温度を境に膨潤収縮する特性を示します。この特性を利用すれば、ジェル内に封入した物質の放出を制御することが可能となるのです。

温度応答性ジェルの機能をさらに向上させるために、1μm以下の大きさに微粒子化する試みがなされています。微粒子化するメリットとして、次のようなことがあげられます。

(1) 大きさが小さいため応答速度が速い
(2) 比表面積が大きくなるため、粒子表面を吸着場や反応場として活用できる
(3) 粒子内部に機能性物質を内包させ、キャリア(運搬体)として利用できる

図2に、温度応答性高分子の1つであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)からなるヒドロジェル粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示します。TEM写真は、水分が存在しない乾燥状態での形態を表しています。この写真から、PNIPAMジェル粒子の大きさは揃っており真球状であることが見てとれます。

水中における粒子の大きさは、動的光散乱という方法により評価することができます。図3に、温度を変えてPNIPAMジェル粒子の水中粒子径を測定した結果を示します。相転移温度である31 ℃付近を境に、粒子径が850 nmから400 nmに大きく変化している様子が観察できます。

感温性ジェル粒子は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアとしての応用が期待されています。DDSでは、必要なときに、必要な場所で、必要な量の薬物を放出するという究極の薬物治療を目指しています。このとき、刺激応答性を有するキャリアを用いることは大変有用です。なぜならば、標的部位に熱などの物理的刺激を与えることで、必要なときに薬物を放出させること(時間的制御)や標的部位という限られた領域のみで薬物を放出させること(空間的制御)が可能となるからです。

感温性ジェル粒子をキャリアとして活用する研究は決して薬物治療の分野だけにとどまりません。内包する物質を、ポリフェノールなどの機能性食品にすれば、食品の分野にも応用できます。食品成分を、大きさがナノメートルの粒子内にカプセル化できれば、以下のような効果が期待できます。

(1) カプセルで保護されている食品成分は胃で分解されにくいため、食品成分の体内における安定性を向上できる。
(2) カプセルの表面を適切な状態にすることにより、腸からの吸収効率を向上させることができる。
(3) においや酸味がある食品成分では、カプセル内に封入することにより呈味性を改善できる。
(4) 水に溶けにくいため、水中で凝集して分子サイズが大きくなってしまう食品成分であっても、カプセル化することにより可溶化できる。

食品成分をカプセル化することは、疾病を予防したり、豊かで健康的な食生活を送ったりするために有意義であると考えられており、今後の発展が期待されています。そのためには、体内に取り入れても安全なカプセル剤を用いて、様々な食品成分を簡便にカプセル化できる技術の構築が必要とされています。

図1

図2

図3

応用バイオ科学科 清水秀信研究室 紹介ページ
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