Quick Search
Quick Search

Quick Search

よく見られているページ

CATEGORY

カテゴリーから知るKAIT

KAITの学び EDUCATION

KEYWORD

キーワードから知るKAIT

Quick Search
大学紹介
教育
学生生活
研究
地域・社会貢献
教職員用ポータルサイト 在学生向けポータルサイト 保護者ポータルサイト 卒業生ポータルサイト

環境浄化と資源の再利用(応用化学科 三枝康男教授)

合成ゴム、繊維や樹脂を製造する高分子化学工業が飛躍的に発展した一方で、資源やエネルギーの枯渇、地球環境や廃棄物処理の問題は避けられなくなっています。そこで今、環境浄化やプラスチックリサイクルの研究に取り組んでいます。
---------------------------------------------------------

応用化学科 三枝康男教授


環境化学技術研究所に関係した二つの研究テーマについて紹介します。

1. バイオミネラリゼーション法を用いたヒドロキシアパタイトとポリイミドの微粒子状複合材料の調製と有害ガス吸着特性の評価

ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2、HApと略記します)という物質があります。これは骨や歯を構成する成分で、細胞と接着したり、化学薬品やタンパク質を吸着する性質を持つことから、化粧品素材、細菌やタンパク質吸着・分離材、人工骨・歯根材などに応用されています。身近なものとして、風邪ウイルスを飛散または吸引しないようHApの粉末を配合したマスクが市販されています。

HApは粉末や固まりで使うことを除くと成型加工することが難しいため、用途が限られます。そこでHAp材料に柔軟性や弾性といった性質を付与するために、高分子に混合して複合体とした材料の開発が行われています。

ところで、動物の骨は"コラーゲン"、甲殻類の殻は"キチン"、貝類の貝殻は主に"コンキオリン"と呼ばれる多糖やタンパク質とカルシウム塩との複合体であることを知っていますか。どれも常温近くの"生体"で営まれる生命活動によってつくられています。この温和な条件の下で、クリーンな生物反応を模倣して材料合成に利用したのがバイオミネラリゼーション法です。

式1に例示しましたが、カルボキシル基を導入するなど使用する高分子には少し工夫を要しますが、高分子の原料となる二つの有機化合物を有機溶媒に希薄な濃度で溶解し、超音波を照射しながら室温で静置またはかき混ぜます。しばらくすると生成した高分子微粒子が析出し、懸濁してきます。

これを遠心分離して回収し、ヒトの体液の組成を真似た擬似体液に生体温度である36℃前後で浸漬させておくと、高分子微粒子の表面にHApの薄膜が積層してきます。現存する高分子の中で最高水準の耐熱性、機械強度、電気絶縁性、寸法安定性や化学安定性を持つポリイミドと呼ばれる高分子を用いて研究を進めていますが、250〜300 nmの粒径の揃った球状の微粒子状複合体が得られています。粒径が極めて小さく、比表面積が大きいことは吸着用途に大変有利であり、現在、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドを対象として複合体の吸着特性の評価を進めています。他の多くの有害ガスの吸着にも有効な、耐久性の高い環境浄化材であることに期待が持てます。

2. ポリエチレンテレフタレートを解重合して得られた生成物からのアクリル酸エステルの合成と光硬化、硬化物の評価

ポリエチレンテレフタレート(PET)は、飲料用ボトルをはじめとして様々な用途に利用されています。PETボトルの生産量、販売量はこの10年間であまり変化はありませんが、回収量は著しく増加しています。2016年度の生産量は59.6万トンで、そのうち実に53.0万トン(回収率88.9%)が使用後、回収されています。この大量生産型プラスチックを資源の一つとして捉えて、再利用する試みが盛んに検討されています。

そのリサイクルの方法には、回収したものを原則そのまま再利用するマテリアルリサイクルと、化学反応を使い分子量の小さな物質に変換して(このことを解重合と言います)、これを再度原料として利用するケミカルリサイクルがあります。PETボトルでは、いったん使用したものは分子量が低下することから、ボトルからボトルに再度成型し直すことはできません。その影響の少ない繊維として主に再利用されています。

ここでプリント配線板について少し説明します。パソコンのパーツ等で見たことのある人もいるでしょう。基板の上に印刷技術を使って銅の回路パターンが作られますが、このままでは配線がむき出しで、断線やショートする危険があります。

そこで、配線板の表面に回路パターンを保護する絶縁膜となるインキを塗布します。このインキは、光が当たると化学反応を起こして固まる(硬化すると言います)物質を含めていくつかの薬品を配合して作られています。乾燥させた塗膜に回路パターンが刻まれたネガフィルムを通して光を当てて現像液で洗うと、光の当たったところは塗膜が固まって残り、光の当たっていないところは塗膜が洗い流されて、微細な回路パターンを刻むことができます。

つまり、塗膜の残ったところは銅の回路パターンが保護され、絶縁性が確保されます。塗膜の洗い流されたところは、配線を行う接点としてさらに部品を接続することができます。

私たちはケミカルリサイクルの一つの方法として、水酸基を3つ以上持った多価アルコールをPETと反応させて多価アルコールの混合物(例えば、図2のI〜III)を得て、これをアクリル酸エステル混合物(例えば、IV〜VI)に誘導しました。

これらのエステルは光照射すると硬化する性質を持った物質です。これらを配合して先のインキを作製して、その作業性(例えば、インキの寿命、塗布のしやすさ、光感度等)や保護膜としての性能(例えば、耐薬品性、はんだ耐熱性、硬度、基板密着性、電気絶縁性等)を評価してみました。

実用化されているインキと比べて、光感度で劣るものの、その他の性質に差異はなく、実用的特性・物性を有していることが確認できました。この研究は、使用済みPETから高い付加価値を持った物質にリサイクルできることを実証したものであり、さらに高性能で他にない特徴を持った硬化性化合物の探索を続けています。

応用化学科 三枝康男研究室 紹介ページ
最新研究情報一覧に戻る