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バイオ機能材料開発へのバーチャルリアリティ技術の応用(情報ネットワーク・コミュニケーション学科 井上哲理教授)

ナノバイオテクノロジーを用いたバイオ機能材料の研究・開発に、バーチャルリアリティ技術を応用することをめざした研究です。現在は、タンパク質分子の立体構造モデルを仮想空間に表示するソフトウェアを開発中です。
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情報ネットワーク・コミュニケーション学科 井上哲理 教授


1. タンパク質の立体構造を理解することの重要性と現在の課題

生命活動は様々なタンパク質の機能の連携で成り立っているので、タンパク質は生体に含まれる物質の中でも最重要な物質の一つです。そして、タンパク質の機能は、その分子の立体構造と密接に関係していることがわかっています。タンパク質分子の立体構造を解析して作用機作を理解することは、現在のバイオサイエンスの研究では基本的で重要なテーマとなっています。さらに、疾病に関わるタンパク質の構造情報をもとに薬を設計する創薬戦略は、新しい研究基盤技術として期待されています。

タンパク質分子自体は非常に小さいので、顕微鏡でも直接見ることは困難です。そこで、X線結晶構造解析などで明らかになった3次元構造データを3DCG(3次元コンピュータ・グラフィックス)でパソコン画面上に表示して、構造情報から機能を研究することが行われています。これまでに解明されたタンパク質分子の立体構造は、世界的なデータベース(プロテイン・データ・バンク*)に集積されていて、研究に自由に利用することができます。

図1は、シャペロニンというタンパク質分子の立体構造をパソコン用の3DCGソフトウェアで表示したものです。シャペロニンは、本研究プロジェクト(バイオメディカル・リサーチ・センター)でも重要な研究対象のひとつです。パソコン用ソフトウェアでは、分子全体の大まかな形を観ることはできますが、分子内部の細部構造を理解するには熟練を要します。これは、タンパク質分子が膨大な数の原子から構成されているために、CGモデルの表示が複雑なものになるためです。バイオサイエンスの研究者は、CGモデルを拡大したり、回転させたり、あるいは表示色や表示形状を変えて、部分的な構造を理解しようと努力しているのが現状です。


2. タンパク質分子モデルを仮想空間に表示する

バーチャルリアリティ(VR)技術とは,3DCGで表示された仮想空間を、まるでそこに実物があるように感じさせる情報メディア技術です。さまざまな技術がありますが、最近話題になっているのは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)という、頭にかぶるタイプの表示ディスプレイです。本研究では、高性能HMDを用いた仮想空間が、バイオ機能材料の開発研究に役立つと考えて、そのためのソフトウェアを開発しています。このソフトウェアは、HMDを装着すると、図2のように、目の前に分子構造の3DCGモデルが浮かんでみえる状況を実現するものです。

このソフトウェアは、まず、タンパク質分子構造データベース形式のモデルデータを読み込んで、3DCGデータに変換します。次に3DCGを仮想空間に配置して、 HMDを通して観察できるように表示します。(図3)

先ほども述べたように、タンパク質分子を構成する原子の個数は膨大で、しかもそれらが複雑な構造で結びついています。タンパク質分子の3DCGをHMDにリアルタイムに表示するには、ソフトウェアに高速な処理が要求されます。また、ユーザが手に持ったコントローラで、分子モデルの拡大・縮小や回転など、さまざまな操作ができるようにすることも必要です(図4)。これらを、実験をとおして、試行錯誤しながら開発しているところです。

3. 目の前に浮かぶタンパク質分子.本研究の可能性と今後の課題.

開発したソフトウェアを、本学の応用バイオ科学科の先生や学生に試してもらいました。いつもはパソコン上で観察しているタンパク質分子のデータを持ってきてもらい、それを本研究ソフトウェアで観察してもらいました。

HMDを装着した瞬間に、自分の目の前にタンパク質分子モデルが浮かんで見えることに皆さんビックリしていました。そして、手元のコントローラを使って、分子モデルを動かしたり、自分が分子モデルの中に入って座って見上げたり、分子に触れようと背伸びしたり、さまざまな動作を試していました。観察後の感想として、「構造観察はPC画面上で操作して確認するより綺麗で分かりやすい」「凸凹の様子を見て取れるため部位の所在が分かりやすい」「内側から見ることができ、タンパク質が働くときの構造の変化が直感的に理解できる」など、このソフトウェアの良い点の意見が多数出てきました。一方で、タンパク質分子研究の面で欲しい機能やソフトウェアの使いやすさ(インタフェース)にも意見が多数ありました。

VR技術をバイオサイエンスの研究開発に役立てようという目的に対して、このソフトウェアは可能性が十分にあることがわかりました。また、本当に役立てるためには、バイオサイエンスを研究している人たちの意見をソフトウェア開発に取り入れていくことが今後の課題となっていきます。

この研究は、応用バイオ科学部と情報学部の研究室が協同して進めています。それぞれの専門知識と経験を組み合わせることで新しい研究・開発の手法を提案していくことをめざしています。

* プロテイン・データ・バンク

https://pdbj.org/
情報ネットワーク・コミュニケーション学科  井上哲理研究室 紹介ページ
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