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時空間制御型ドラッグデリバリーを可能にするタンパク質ナノカプセルの開発(バイオメディカル研究センター/管理栄養学科 教授 小池 あゆみ)

シャペロニンは、一定時間で開閉を繰り返すナノカプセル型構造をしたタンパク質です。生物がもつこの分子装置を改変し、決まった場所へ薬を運び、望みの時間に薬物を放出するデリバリーシステムを開発しています。

B科小池先生

(バイオメディカル研究センター/管理栄養学科 教授 小池 あゆみ)

薬の薬理効果は、特定の標的部位に薬効をもつ分子が結合し、作用することによって発揮されます。そして、薬理効果を十分に発揮するためには、必要な量を望みの時間に標的部位に送達すること(時間的・空間的制御)が重要となります。しかし、薬そのものにそれらの性質を持たせることは難しく、キャリア(運搬体)に放出制御性や標的指向性を付与する手法が試みられています。

大腸菌がもつシャペロニン(GroEL/GroES)は、細胞内に存在する膜タンパクを除く約2500種の可溶性タンパク質のうちの約15%のフォールディング(構造形成)を助けるタンパク質です。GroELは、サブユニット7つからなるリングが2つ重なった14量体構造をしており、リング内部にはそれぞれ直径約5nmの空洞があります(図1)。生体内の「エネルギーの通貨」などと呼ばれる「アデノシン三リン酸(ATP)」の加水分解でGroELは構造変化し、GroESを蓋のように結合してできた閉鎖空間に細胞内の変性ポリペプチドを閉じ込めて、凝集を防ぎながらフォールディングさせ、ATP加水分解が終了すると、内包物とGroESを解離します。つまりシャペロニンは、ATP加水分解の時間をタイマーとして蓋を開閉し内包物を取り入れたり放出したりする、タンパク質でできた140Å(オングストローム)×240Å(14 nm×24 nm)のカプセルといえます。

図1 シャペロニン複合体の構造

図1 シャペロニン複合体の構造

これまで、シャペロニンをドラッグデリバリーシステムに応用するために必要な以下のことを明らかにしてきました(図2)。

(1)シャペロニンは、変性タンパク質に限らず金属ナノ粒子や化合物を内包することができる。

(2)シャペロニンのATP加水分解に重要なアミノ酸を他のアミノ酸に置換することで、望みの時間で蓋を開閉することができる。

(3)細胞の特定の場所に内包物を運ぶためのシグナル配列をシャペロニンカプセルに結合させると、細胞内局所送達が可能である。

(4)シャペロニンに薬を内包させた状態で1次元に自己会合させ、薬剤のナノテープを形成できる。

この薬剤ナノテープは、ATPの濃度を感知し、細胞内で薬剤を放出することができる。
シャペロニンはそれ自身の安定性が非常に高いため、シャペロニン内に取り込まれた薬剤は安定に目的の場所(患部)に配達できると期待されます。生物のもつ分子装置の原理を理解し、精巧な仕組みを科学技術に応用することを目指しています。

図2 シャペロニンのドラッグデリバリーへの応用

図2 シャペロニンのドラッグデリバリーへの応用

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