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見えない原子を操る有機合成化学(応用化学科 山口淳一教授)

見えない炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子を規則正しく並べ、地球上にない新しい有機化合物を作り上げます。目に見えない有機化合物を作り、それを目に見える形で社会に送り出しています。
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応用化学科 山口淳一教授


現在、有機化合物は無限に存在することが可能ですが、知られている有機化合物は一説に2000万以上と言われています。天然から単離される化合物もありますが、多くの化合物は人が合成したものです。有機化合物を構成する主な元素は、炭素、水素を中心に10種類もありません。しかしながら、原子のつながり方は無限であり、これこそ有機化合物が無限に存在することの根拠となっています。有機合成化学者は、様々な手法を駆使して新しい化合物を合成しており、新規化合物が新しい機能を有しているかを検討しています。

研究室のテーマは多岐にわたっており、すべてを書き尽くすことはできませんので代表的な研究テーマを1つ挙げます。

1.アズレンを含む新規化合物の合成と性質
アズレンは炭素原子が10個、水素原子が8個からなる化合物で、ナフタレンと異性体の関係にある化合物です。ナフタレンは白い結晶なのに対して、きれいな青色をしているのが特長です。古来、ハーブから採れる精油を水蒸気蒸留すると青く変色することが知られていました。昔の化学者はその色に興味を持ち青色成分の単離を行い、基本骨格の化合物の「青」を意味する言葉azulを元にして、アズレン(azulene)と名付けました。

アズレンの特長の一つとして、アズレン骨格に導入される置換基の種類あるいは場所によって色が変化することです。当研究室では、イノンと呼ばれる置換基をアズレンの1位、2位、4位、6位に導入したアズレンを合成しました。2位、4位、6位のものはアズレン由来の青を基調としていますが、色調はそれぞれ異なり、個性的な色を出しています。一方、1位置換体は赤色を示すなど置換場所によって色が大きく異なることを見いだしました。このアズレン誘導体群を、窒素原子を含む第3級アミンで処理したところ、イノンからエナミノンと呼ばれる化合物へと変換されました。一般的に窒素--炭素結合は切れにくい結合ですが、温和な条件下で反応が進むと分かり驚きました。化学(科学)予測できることも多くなっていますが、まだまだ実際に実験してみないと分からないことも多く、これが化学(科学)の醍醐味です。

また呈色についても置換位置によって、それぞれ異なることが分かりました。すなわち1位のものは赤色に、2位のものは緑色に、4位のものは水色に、6位のものは黄緑色に変化することが分かりました。色のある化合物は可視光領域の波長(おおよそ380〜800nm)の光を吸収し、吸収しなかった光がその化合物の色(補色)として見えます。紫外--可視スペクトルを測定すると400 nm付近の吸収が大きく異なっていることが分かり、置換位置によってアズレン部分の構造(特に電子配置)が異なっていることが分かりました。アズレン誘導体は、例えば半導体の働きをすることが報告されていることから、将来新しい電子素材に使われる可能性が期待できます。

さらに、エナミノンを有するアズレン誘導体から、新しい化合物の合成も試みています。エナミノン部分を反応によって違う形に変換し、新しい性質を見いだすことも行っています。エナミノン部分をピリジンと呼ばれる窒素原子を含む化合物へと変換しました。色々と検討した結果、2位あるいは6位のエナミノンから合成することが可能であり、図に示すような複雑な構造をする化合物を新たに生み出すことに成功しています。窒素原子は、非共有電子対を持っていることから金属イオンと配位結合することができます。その結果、金属イオンに特有な色の変化が起これば、その金属を検出する試薬としても利用できます。いろいろな金属を試した結果、マグネシウムイオンは変化しなかったのに対し、リチウムイオンは青っぽく変化し、亜鉛イオンは紫色に変化することを見いだしています(銅イオンや鉄イオンは反応してしまし沈殿物を生じています)。紫外−可視スペクトルでも、亜鉛イオンについては特に変化が大きいことが分かります。

以上のように、当研究室では新しい化合物の合成を行い、それが新しい(変わった)性質を持っていないかなどの研究を日夜行っています。新しいものをつくるのは楽しいことです。皆さんも新しい化合物をつくり出す喜びを共有しましょう!

なお、成果の一部は、3月に開催された学会「日本化学会 第98回春季年会」(日本化学会 主催)にて発表を行っています。

応用化学科 山口淳一研究室 紹介ページ
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