羽毛の中に眠る"皮膚を守るスイッチ"を探せ!(先端工学研究センター 医療・生命・栄養研究室/応用化学生物学科 教授 井上 英樹)
ふだんは捨てられてしまう羽毛。その中に、皮膚を守り、傷の修復を助け、髪の成長にも関わる小さな分子が隠れているかもしれません。
捨てられる羽毛(フェザー)を研究資源に
羽毛は衣類や布団に使われるダウンと、硬いフェザーに分けられます。私たちの研究は、ふだんは捨てられてしまう羽毛(フェザー)に含まれる「ケラチン」というタンパク質に注目しています。羽毛ケラチンを細かく分解すると、ペプチドという小さな分子ができます。この羽毛加水分解ペプチドが、皮膚の細胞にどのようなはたらきをするのかを調べてきました。

応用化学生物学科 井上英樹教授
皮膚細胞を守り、傷の修復を助ける
これまでの研究から、このペプチドは単に栄養としてはたらくのではなく、細胞の中のスイッチを入れるように作用することが分かってきました。たとえば、皮膚の表面をつくる角化細胞や、皮膚の内側でコラーゲンをつくる線維芽細胞に対して毒性を示さず、細胞が傷をふさぐ動きを助けることが確認されています。また、細胞を酸化ストレスから守る力を高めたり、コラーゲン、インボルクリン、フィラグリンなど、皮膚の構造、バリア機能や保湿に関わるタンパク質を増やす可能性も示されています。
細胞の中の"修復スイッチ"を探る
特に注目しているのは、ERK MAPKという細胞内シグナルです。これは、細胞に「動く」「増える」「修復する」といった命令を伝える重要な経路です。羽毛ペプチドはこのERK MAPKを起点として、IL-6/STAT3経路やTGF-β/Smad経路を動かし、皮膚の傷の修復を助けている可能性があります。今後は、羽毛ペプチドの中のどの成分がこの働きを持つのかを分離・同定し、合成したペプチドで同じ作用が再現できるかを調べます。
肌の修復から髪の成長へ
さらに、この研究は創傷治癒だけでなく、毛髪の成長にも広がります。毛の成長には、毛乳頭細胞や毛包幹細胞の働きが重要で、Wnt/βカテニン経路というシグナルが関わっています。羽毛ペプチドがこの経路を活性化し、毛包を元気にすることができれば、薄毛や頭皮ケアにつながる新しい技術になるかもしれません。捨てられる羽毛から、皮膚を守り、傷を治し、髪を育てる新しい素材を見つけることを目指しています。

▼本件に関する問い合わせ先
研究推進機構 研究広報部門
E-mail:ken-koho@mlst.kanagawa-it.ac.jp
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