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運動と食品素材サプリメントの併用でより元気な身体を作れるのか?――筋肉と脂肪の連携に注目(バイオメディカル研究センター/管理栄養学科 教授 清瀬千佳子)

運動が体に良いことは知られていますが、運動に加えて"ある栄養成分"をとると、体の働きはもっと変わるかもしれません。私たちはビタミンEの一種「δ-トコフェロール」に注目し、筋肉から出る物質が脂肪にどう影響するかを調べています。

管理栄養学科 清瀬千佳子教授

脂肪細胞は2種類:ためる「白色」と、燃やす「褐色」

我々の体内には大きく分けて2つの脂肪細胞が存在します。1つは白色脂肪細胞で、内臓周囲や皮下にあり、1つの細胞の中に大きな脂肪滴をかかえています。これはいざという時のために摂取した糖質などを貯蔵エネルギーとして蓄えているためです。しかし近年、過剰な脂肪の蓄積が様々な生理活性物質を産生している事が明らかとなりました。脂肪で産生される生理活性物質はアディポサイトカインと呼ばれますが、そのほとんどが我々の身体にとって負の働きとなるもので、生活習慣病の発症に大いに関わっていることが明らかとなっています。

一方、褐色脂肪細胞とは脂肪細胞でありながら、脂肪滴は小さく多胞化されており、ミトコンドリアが多数存在する事で、茶褐色に見える事から褐色脂肪細胞と呼ばれるようになりました。褐色脂肪細胞にあるミトコンドリアには脱共役タンパク質であるUCP1が存在します。ATPは細胞の中で使われるエネルギーのもとですが、UCP1はそのATPをつくる代わりに、エネルギーを熱として放出します。褐色脂肪細胞は新生児で体温維持に重要な役割を果たすことが知られており、脂肪をため込むのではなく消費する性質をもつため、肥満予防や代謝改善の観点からも注目されています。

白色脂肪が"燃える性質"を持つ:ベージュ化という変化

元々この2つの脂肪細胞は幹細胞から異なっており、まったく異なる起源から派生しています。しかし、近年、白色脂肪細胞へと分化する際、ある条件が揃う事で、白色脂肪細胞でありながら、褐色脂肪様組織に分化できる事(ベージュ化)が明らかになりました。その条件とは、寒冷や運動などの物理的な負荷などと言われていましたが、我々は食品成分を摂取することで白色脂肪細胞のベージュ化を誘導できないか、それによって抗肥満効果へと導けないかと考えました。

食品成分でベージュ化を起こせるか ビタミンE(δ-トコフェロール)に注目

そこで着目したのがビタミンEです。ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種で、栄養素として大事な働きを持っていますが、新たな機能を見出せるのではないかと考え検討を始めました。その結果、α-ならびにδ-トコフェロールが白色脂肪細胞をベージュ化(抗肥満)できる事を明らかにしており(※1)、さらに白色脂肪細胞への抗炎症作用および褐色脂肪細胞の抗炎症作用も明らかにしており、δ-トコフェロールの抗肥満・抗炎症作用を持つ事を示唆しました。

運動と併用すると効果は強まる? 次の鍵は"筋肉"

現在、我々は運動とδ-トコフェロール摂取の併用で白色脂肪細胞のベージュ化へより強い誘導が出来るのではないかと考えています。その理由の1つが骨格筋から分泌される「イリシン(Irisin)」の関与です。

筋肉が出すメッセージ物質「イリシン」と、脂肪の熱産生(UCP1)

イリシンは骨格筋から分泌される生理活性物質の1つで、ホルモンのような働きをすることがわかっています。実はイリシンは膜タンパク質であるFNDC5の細胞外ドメインの部分であり、切断されることで血中に分泌され、この部分を「イリシン」と呼ぶようになりました。運動によって分泌が促進される事が明らかとなっており、これが血中を介して白色脂肪組織や褐色脂肪組織に働いて、UCP1の発現を増強することが報告されています(図1)。

図1. 骨格筋から分泌するイリシンの働き

今回の仮説:δ-トコフェロールがイリシンを介して脂肪に働く?

我々は先に述べたように、ビタミンEの一種であるδ-トコフェロールの摂取によって白色脂肪細胞がベージュ化する事を明らかにしています。そこで、δ-トコフェロール摂取が骨格筋にも働きかけ、イリシンの発現を上昇させる事で、白色脂肪組織や褐色脂肪組織のUCP1の発現上昇に間接的に関わっているのではないかと考えました。

研究方法:4つの群で検証(運動のみ/δ-トコフェロールのみ/併用)

マウスを対照群(C群)、自由運動群(CE群)、運動を行わずにδ-トコフェロールを摂取する群(CD群)とδ-トコフェロールを摂取し、さらに自由運動ができる群(CED群)の4群に分けました。8週間飼育後、骨格筋中のイリシンの遺伝子発現量を見てみたところ、運動のみの群でもδ-トコフェロール摂取のみでもその遺伝子発現量を有意に上昇させる事が明らかとなり、さらに運動とδ-トコフェロール摂取との相乗作用も見られました(現在、特許申請中)。これらの結果より、摂取したδ-トコフェロールは骨格筋にも効果を示し、δ-トコフェロールには骨格筋と脂肪組織との間での臓器間ネットワークに関わる可能性が考えられました。現在はタンパク質発現量や、血中イリシン濃度についても検討しています。

今後の展開:血中イリシンの検証と、新たな可能性

イリシンは2012年に発見された比較的新しい生理活性物質で、まだ分かっていない事がたくさんあると思われます。ビタミンEの摂取がイリシンの遺伝子発現や活性を上昇させる事が論証されれば新たな発見として非常に注目されると思われます。さらに、最近では、イリシンがアルツハイマー型認知症の予防にも関わっているという報告も出始めており、ますます目が離せない物質となっています。我々はδ-トコフェロールの摂取で、骨格筋中イリシン産生を増強することで、白色脂肪細胞のベージュ化だけでなく、脳におけるアルツハイマー型認知症の予防を間接的に行える可能性を見出したいと思っています。

参考文献

※1
Tanaka-Yachi, R., Kiyose, C. et al., J. Oleo Sci., 66, 171-179 (2017) .
Tanaka-Yachi, R., Kiyose, C. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 506, 53-59 (2018) .

▼本件に関する問い合わせ先
研究推進機構 研究広報部門
E-mail:ken-koho@mlst.kanagawa-it.ac.jp

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