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日本における希少資源であるリンの効率的な回収技術の確立~新規リン回収システムの構築を目指して~(応用バイオ科学科/先端工学研究センター 准教授 和田 理征)

応用バイオ科学科/先端工学研究センター 和田 理征 准教授

本研究の目的は、排水中に含まれるリン酸を回収する高分子材料の開発である。リン酸を回収する材料として、比表面積が大きくなる微粒子を作製した。この微粒子に金属イオンを配位させ、リン酸の吸着実験を行ったところ、高い吸着率を示した。その研究を紹介する。

リンは生物にとって重要な元素の一つであり、人体においても5大栄養素に挙げられる。日本は、リンの原材料であるリン鉱石を100%輸入に依存している。そのほとんどが化学肥料として使用されているが、排水中にもリンが含まれている。リンなどの栄養塩が公共用水域(湖や海など)に流入すると、植物プランクトンが増殖して赤潮やアオコが発生する原因となる。現在でも東京湾では、春から秋にかけて赤潮の発生があるため監視が行われている。昨年、北海道沿岸でウニやサケなどの魚介類が大量死した原因は、赤潮であるといわれている。栄養塩を除去するための処理(高度処理)法は生物学的および物理化学的手法が用いられるが、これらの処理法は時間がかかることや脱水補助剤の凝集剤などが必要となる。そこで本研究では、一般的な排水処理施設(生活排水処理施設や工場排水処理施設)より排出されるリン濃度を、より簡便に低減し、さらにリンを資源として回収できる材料の開発を行っている。

本研究のリン回収材料は、高分子に金属イオンを配位させた微粒子である。微粒子は比表面積(単位質量当たりの表面積)が大きくなるため、多くのリンを回収できると考えられる。作製した微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。

  

  

微粒子の大きさは約5µm程度であり、比較的比表面積が大きいといえる。この微粒子に金属イオン*2を配位させてリン酸の吸着実験を行い、その結果を図2に示す。図2より、リン酸イオン(PO43-)濃度が1.2mg/L~25mg/Lの範囲で90%以上と高い吸着率を示した。この粒子の吸着率は、一般的な排水処理施設から排出されるリン酸濃度より、低くてもまた高くても対応可能である。

  

  

また、リンが吸着しているのか確認するために、エネルギー分散型X線分析(EDX)測定を行ったところ、図3に示すように2.0keVにP(リン)の特性X線ピークが現れ、PO43-が吸着していることがわかった。

  

  

さらに、実排水処理への適応を検討するために、人工排水の処理水中でPO43-の吸着実験を行った結果を図4に示す。今回測定したイオン種は、Mg2+、Ca2+、NO2-、NO3-、PO43-である。図4より、微粒子に吸着したイオン種は、Mg2+、Ca2+、PO43-であった。また、PO43-の吸着率は36%程度であった。この微粒子には、水との親和性を考えてカルボキシ基(-COOH)が含まれており、このカルボキシ基が解離(-COO-)し、Mg2+とCa2+を吸着したと考えられ、その結果、PO43-の吸着率が低下したと考えられる。しかしながら、陰イオンはPO43-しか吸着しなかったことから、陰イオンの吸着選択性があるといえる。また、この粒子の官能基(カルボキシ基など)の割合を変化させることによって、PO43-の吸着率が向上し、実排水処理においても使用可能であると考えられる。この技術が確立できると、新規のリン回収システムが構築できると考えられる。

  

  

*2排水中のリンはリン酸(PO43-)として存在していることが知られており、このリン酸を吸着させるためにFe3+を微粒子に配位させることにより、静電的な吸着が起こると考えられる。

  

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