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最新研究情報

2018.06.08

異文化における嗜好性分析に基づいた料理写真の色合いフィルタの実現に関する研究―タイと日本をケーススタディとして―(情報工学科 鷹野 孝典教授)

情報工学科 鷹野 孝典教授

理の写真を、その人にとっておいしいと感じる色合いに自動調整する機能の実現を目指しています。
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本研究では、料理の「見た目」に着目して、デジタル化された料理メニューなどを見た時に、料理の写真を、その人にとっておいしいと感じる色合いに自動調整する機能の実現を目指しています。

本研究は、タイ・チュラロンコーン大学(Chulalongkorn University, Thailand)Aran Hansuebsai 先生の研究室との共同研究として実施しています。

さて、私たちは毎日「食事」をしていますが、料理の好みは人によってさまざまです。私たちが、料理を選ぶとき、味、香り、見た目、価格、質と量、栄養、健康、気分、他の料理との組み合わせなどから、いくつかの要素を考慮して決めていると思います。例えば、下記のハンバーガの料理写真があったときに、みなさんにとっておいしいと感じる色合いのものはどれでしょうか?

本研究では、特に料理の「見た目」に着目して、ある人にとっておいしいと感じる料理の色合いを分析し、その分析結果に基づいた画像変換処理により料理写真の色合いを自動調整する機能の実現に焦点を当てます。本研究の特徴的な点として、料理の味や見た目の好みは、人々が生活する文化や社会に影響を受けていると考え、特に、タイと日本に暮らす人々を対象として、おいしいと感じる料理の色合いについての比較分析を、情報技術を活用しながら行っていることが挙げられます。

なお、グローバル化する情報化社会において、異なる文化や社会背景を持って暮らす人々がお互いを理解し合うということがますます大切になっています。ここで、異なる文化や社会において、思想、行動様式、感性などを比較検証することによって理解を深める学問を異文化研究と言います。本研究も、料理の見た目に対する印象や嗜好性をタイと日本の2国間について分析する異文化研究として位置付けられます。

料理メニューや広告に掲載される料理写真は、できるだけ美味しく見えるように写真を撮影し、必要に応じて色合いなどを調整することで、消費者にとって魅力的な印象となる写真に仕上げて掲載されます。ちなみに、料理を美しく、かつ美味しく見せるように仕上げる仕事としてフードスタイリストという職業もあります。下図は、フードスタイリストによる作品の例になります。

https://www.tamaravosfood.com/より引用)

しかしながら、私たちは、人々が料理の見た目から美味しさに対して感じる印象は、その人々が暮らす社会や文化に少なからず依存していると考えました。この仮定は、私たちが料理の写真を見るときに、文化や社会背景に応じて異なる印象を抱く可能性があることを意味します。さらにこのことは、食品を扱うグローバル企業にとっては、世界各国での販売戦略を決定する上ではとても重要であることを示唆しています。例えば、グローバル企業であるハンバーガ企業のメニュー広告を見てみると、同じ会社であるにかかわらず、掲載されている料理写真の色合いは異なっている場合があることに気づきます。食事文化のグローバル化とともに、異文化感性の視点により料理写真をおいしいと感じる色合いに調整する仕組みの実現が、グローバル企業の市場拡大戦略だけではなく、海外旅行者などを対象とした地域のカフェやレストランにおける顧客獲得や販売促進においても、ますます重要となってきます。

本研究では、このような背景から、異文化における嗜好性分析に基づいた料理写真の色合いフィルタを提案しています(図3)。本色合いフィルタは、(1)大量に収集された料理写真から彩度、明るさ、コントラストなどの色特徴を分析する「色合い分析器」と、(2)色合い分析結果に基づいて、料理写真の色合いを自動調整する「色合いフィルタ」、から構成されます。

スマートフォンで利用できる写真編集アプリでも、写真をセピア色や白黒に画像変換する機能がありますが、これらの機能は写真の色合いフィルタの一種です。本研究が提案する色合いフィルタは、料理写真について、異文化の人々がおいしいと感じる色合いを知識としてデータベース化しておき、その知識を活用して料理写真を見栄え良く画像変換するための色合いフィルタであると位置付けることもできます。

本研究の分析結果として、日本の料理メニューや広告では明るく赤みのある色合いの料理写真が使用されることが多く、一方、タイでは暗く緑がかった色合いの料理写真が使用される傾向にあることがわかりました。さらに図1に示したように、色合いを変化させたハンバーガ画像を見せることにより、おいしいと感じる色合いがどれであるかを調査したアンケート結果から、日本人は前者の色合いの料理をおいしいと感じ、タイ人は後者の色合いの料理写真をおいしいと感じる傾向にあることも確認することができました。図3では、フライドチキンの料理写真について、日本人向けには明るく赤みのある色合いに調整し、タイ人向けには暗く緑がかった色合いに調整する例を示しています。

世界ではグローバル化がますます進展し、多くの国々において文化、社会、経済が相互に影響を及ぼしあうようになりました。国境を越えたヒトの移動も盛んになり、世界中のさまざまな異国の地で、食事体験をする人々も増加しています。本研究が「食」のについての異国文化の相互理解の一端を担うとともに、グローバル化する食事文化を支える知的情報システムとして貢献することができれば幸いに思います。

情報工学科 鷹野孝典研究室 紹介ページ

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